長崎のローカルなわらべうたであった「でんでらりゅうば」が、日本全国の幼稚園・保育園、そして一般家庭へと決定的に定着した契機は、間違いなくNHK Eテレの教育番組『にほんごであそぼ』による翻案でした。番組内では単一の歌唱にとどまらず、伝統芸能の身体技法やポップカルチャーの意匠を融合させた複数の画期的アプローチが試みられました。
ここでは、番組史に刻まれた代表的な歴代バージョンの特徴と、視聴者・教育現場に与えた影響を比較データとして整理します。
でんでらりゅうば 野村萬斎氏のアプローチは、日本の伝統芸能である狂言の身体統御論を、幼児向け教育コンテンツに持ち込んだ革新的な試みでした。野村氏はインタビュー等で「言葉の持つ音の響きと身体の運動が一致したとき、子どもは言葉を記号ではなく肉体的な感覚として記憶する」という趣旨を語っています。萬斎氏の研ぎ澄まされた手の所作は、言葉の濁音や撥音に鋭い輪郭を与え、幼児の視線を釘付けにしました。
一方、番組発の女性ユニットにほんごであそぼ ちーむ・をとめ座によるバージョンは、伝統的なわらべうたを現代的なガールズポップの躍動感へと昇華させました。彼女たちの息の合った超高速の手合わせは、見る者に「自分も挑戦してみたい」という強烈な意欲を喚起し、これが大手自動車メーカーのTVCM(長崎出身の女優を起用したシリーズ)へ翻案されるなど、2010年代のカルチャーシーンに巨大な足跡を残しました。