多部未華子さんの官能的な魅力やラブシーンが語られる際、必ず筆頭に挙げられるのが2015年公開の主演映画『ピースオブケイク』です。田口トモロヲ監督がメガホンをとった本作で、彼女は恋愛依存気味で流されやすい主人公・梅宮志乃を体当たりで熱演しました。相手役を務めた綾野剛さんとの共演シーンでは、リアルで生々しいキスシーンやベッドでの濃厚なラブシーンが描かれ、それまでの「清純派」というパブリックイメージを鮮やかに覆しました。
当時の舞台挨拶や映画雑誌の公式インタビューにおいて、多部さんは「志乃の弱さや衝動を表現するためには、あのリアルな距離感が必要不可欠だった」と述懐しています。作為的なエロティシズムではなく、傷つきながらも愛を求める20代女性の切実なリアリティを表現したからこそ、同世代の女性を中心に絶大な共感と支持を集めました。
また、2012年のTBS系ドラマ『大奥〜誕生[有功・家光篇]』で見せた徳川家光役も語り継がれる名演です。堺雅人さん演じる有功との間で繰り広げられた逢瀬の場面では、少女から女帝へと変貌を遂げる過程での気品に満ちた艶っぽさを披露。露出度の高さに頼るのではなく、視線の交錯や吐息の揺らぎといった繊細な所作で「大人の色香」を表現し、批評家筋からもその卓越した表現力が高く称賛されました。