スイスが世界中から注目される最大の理由は、自国民だけでなく外国人に対しても医師幇助自殺(自死幇助)の門戸を開いている点にあります。オランダ、ベルギー、カナダなど安楽死を合法化している他国では、原則として自国の居住者や市民権保持者に利用を限定しています。スイスが独自のスタンスを保ち続けている背景には、法体系の特殊な成り立ちがあります。
スイスにおいて根拠となっているのは、1942年に施行されたスイス刑法115条です。同条文は「利己的な動機から他人の自殺を教唆または幇助した者は処罰される」と規定しています。逆を言えば、「利己的な動機(遺産目当てや個人的な怨恨など)が存在しない場合、自殺の幇助は罪に問われない」という法解釈が成立します。この規定に基づき、非営利の自死支援組織が合法的に活動を続けてきました。
混同されやすい概念として「積極的安楽死」と「医師幇助自殺(自死幇助)」、そして「尊厳死」の違いが挙げられます。
- 積極的安楽死:医師が患者に直接致死薬を投与して死に至らしめる行為(スイス刑法114条によりスイス国内でも禁止・違法)。
- 医師幇助自殺(自死幇助):医師が処方した致死薬を、患者本人が自らの手で経口摂取または点滴のストッパーを開けて投与し絶命すること(スイスで条件付き合法)。
- 尊厳死(消極的安楽死):過度な延命治療を差し控え、または中止して自然な死を迎えること(日本国内の終末期医療でもガイドラインに基づき実施)。
スイス国内最大の自死支援団体であるエグジット(EXIT)はスイス居住者のみを対象としていますが、1998年に設立されたディグニタス(Dignitas)や、近年注目を集めるペガソス・スイス(Pegasos Swiss Association)は、世界各地からの相談および受け入れを行っています。