「同じ魚なのに、自宅で切るとスーパーの刺身より水っぽく感じる」「噛み切るときに筋が口に残る」といった不満を抱く人は少なくありません。この現象を引き起こす主因は、包丁の切れ味ではなくサーモン筋の向きに対する包丁の入れ方にあります。
サーモンの身には「ミオトーム」と呼ばれる魚類特有の筋肉の層があり、その間を「筋隔(きんかく)」というコラーゲン質の結合組織が走っています。これが刺身の断面に見える白い縞模様です。この白い筋と平行に包丁を入れてしまうと、コラーゲンの膜が長い帯状に残ってしまい、噛んだ瞬間に硬さや筋っぽさを感じてしまいます。
対して、白い筋の走行方向に対して垂直に近い角度で包丁を入れる「逆目切り」を施すと、筋繊維が細かく断ち切られます。舌の上に乗せた瞬間、体温(約36度)によってサーモンの不飽和脂肪酸が急速に溶け出し、噛む必要がないほどのなめらかな食感へと昇華するのです。また、身を押し潰すように切ると細胞が破壊されて旨味成分であるイノシン酸を含むドリップが流出しますが、刃元から刃先までを一気に引くサーモンスライス失敗しないコツを実践すれば、断面が鏡面のように輝き、みずみずしい旨味が身の中に完全に閉じ込められます。