ミリオンセラーの裏側には、緻密な戦略とアーティスト本人の葛藤が交錯するドラマが存在していました。
篠原涼子のブレイクスルーとなった「恋しさと せつなさと 心強さと」(1994年)は、映画『ストリートファイターII MOVIE』の主題歌として制作されました。当時、東京パフォーマンスドールのメンバーとして活動しながらバラエティ番組でコントにも挑戦していた彼女の「切なさを秘めたハスキーボイス」に小室氏が着目。哀愁漂うメロディとユーロビートの融合が、当時のカラオケ文化と完璧に合致し、女性ソロ歌手として史上初の200万枚突破という金字塔を打ち立てました。
安室奈美恵とのタッグは、ユーロビート調のグループ活動から本格的なR&B・ダンスポップ路線への転換点となりました。「Chase the Chance」「Don't wanna cry」、そして結婚・出産という人生の節目にリリースされた「CAN YOU CELEBRATE?」は、単なるヒット曲を超えて時代のアンセムとなりました。小室氏は彼女の類まれなリズム感と意志の強さを引き出すため、あえて難度の高い符割りとキー設定を要求。安室はそのハードルを圧倒的な努力で超え、のちに小室プロデュースを離れて完全な自己プロデュースへと進化する強固な土台を築き上げました。
鈴木あみのプロデュース経緯は、テレビ東京系『ASAYAN』の「ボーカリストオーディション・ファイナル」に端を発します。約30万人近い応募者の中から視聴者投票で1位を獲得した彼女に対し、小室氏は「等身大の親しみやすさ」を前面に押し出すプロデュースを展開。「love the island」で鮮烈なデビューを飾り、TM NETWORKのカバー曲である「BE TOGETHER」で初のオリコン1位を獲得するなど、平成末期のシンデレラストーリーを体現しました。