趙国北部戦線の天王山となった「番吾(ひご)の戦い」において、司馬尚率いる青歌軍はまさに戦場を支配する主役となりました。王翦軍と対峙した司馬尚は、自ら巨大な矛を振るって先陣を駆け抜け、鉄壁を誇る秦軍の防御陣を紙細工のように蹂躙したのです。
司馬尚の強さの本質は、個人の卓越した武力にとどまりません。彼の突進力は、青歌軍の将兵全員が「司馬尚の盾となり矛となる」という狂信的かつ純粋な結束力によって何倍にも増幅されています。かつて秦軍の知略の象徴であった倉央や亜光、田里弥といった王翦軍の誇る精鋭将校たちでさえ、司馬尚の本能的な突破力と青歌の猛攻を前に陣形を維持することすらできませんでした。
王翦自身が「化け物」と認めざるを得なかったその突進力は、かつての武神・龐煖のような個の孤立した暴力ではなく、全軍の想いを背負った集団破壊の結晶でした。王翦が死の淵まで追い詰められ、配下が身代わりとなって命を散らしていく光景は、連載の読者に凄まじい絶望感と興奮を与えた名シーンです。