封筒の外見がどれほど整っていても、開封した瞬間に中身のお札が粗雑に扱われていれば、感謝の思いは半減してしまう。お札の選定と封入の手順にも厳格なプロトコルが存在する。
大前提として、包む紙幣はすべて「新札(ピン札)」を用意しなければならない。銀行の窓口や両替機であらかじめ用意しておくことは、慶事において「あなたの参列を心待ちにし、今日のために前もって時間と手間をかけて準備しました」という無言のメッセージとなる。財布に入っていた流通紙幣をそのまま入れる行為は、相手を軽視していると受け取られかねない。
続いて確認すべきは、お車代のお札の向きと入れ方である。祝儀袋でもポチ袋でも基本構造は同一である。封筒の表面(「御車代」と書かれた側)に対し、お札の肖像画が描かれている「表側」を向けて封入する。さらに、封筒の取り出し口側に肖像画の頭部が来るように配置する。これにより、ゲストが封を開けて紙幣を取り出した際、最初に肖像画と目が合う形となり、これが慶事における正式な所作とされている。
小型のポチ袋を使用する都合上、やむを得ずお札を折って入れる場合は、「三つ折り」が標準となる。肖像画を表にして右側から中央へ3分の1折り、次に左側を折り重ねる。封筒には、折られたお札の上部(肖像画の頭部側)が封筒の底面ではなく天面(取り出し口)を向くように収めるのが正当な作法である。
そして現場で極めて誤解が多いのが、お車代封筒ののり付けとシールのマナーである。結論から述べると、お車代の封筒は原則としてのり付けを行わない。結婚式当日に渡されるお車代は、受取人が帰宅途中の交通費やタクシー代としてすぐに開封して使用する可能性が高い。がっちりと糊付けされていると、出先で開封する際に封筒を破いてしまったり、中身の確認に手間取ったりと、かえってゲストに不便を強いることになる。
封筒のフタ(ベロ)は軽く折り返しておくだけで十分であり、どうしても中身の脱落が心配な場合は、剥がしやすい慶事用の小さな金シールを1枚添える程度にとどめるのが現場の実践知である。中袋がある祝儀袋の場合も、中袋・外袋ともに糊付けは不要と心得ておきたい。