日中は会話も普通にこなせていたにもかかわらず、就寝時や深夜2時から4時頃にかけて激しい咳で目が覚めてしまう現象には、人体の生理機能に基づいた明確な医学的根拠が存在します。主な原因は、自律神経の切り替わりと横臥(おうが)位による気道環境の変化の2点に集約されます。
夜間はリラックスを司る副交感神経が優位に働きます。副交感神経が活発になると気管支平滑筋が自然に収縮して気道の断面積が狭くなるため、わずかな刺激物に対しても敏感に反応してしまいます。加えて、横になって平らに寝ることで、鼻炎や軽微な炎症による鼻水が喉の奥へ垂れ落ちる後鼻漏(こうびろう)が発生し、これが知覚神経の密集する咽頭を直接刺激して反射的な咳嗽を誘発するのです。
この夜間特有の悪循環を断ち切るために、臨床現場で推奨されているフィジカルアプローチが上半身の挙上と側臥位(横向き寝)です。仰向けで完全に水平に寝ると気道が狭まりやすくなりますが、枕やクッション、折りたたんだ毛布を背中の下へ差し込み、上半身全体を約20〜30度の傾斜で高く保つと、後鼻漏の流入を防ぎつつ気道内腔を広く確保できます。また、横向きに寝る姿勢は舌根沈下を防止し、気道抵抗を大幅に低減させます。
さらに、首元の温度管理も見落とせません。喉や首元を温める行為は、気道の過敏な収縮反応を抑制し、局所血流を改善して粘膜の自己修復を促進する効果を持ちます。就寝前に蒸しタオルを首の後ろや喉元に当てて温かい蒸気を深く吸い込む、あるいはネックウォーマーを着用して冷気から首周りを遮断する処置は、深夜の突発的な気道痙攣を防ぐ確かな防壁となります。