茨城県常総市新石下のロードサイドに位置する若鶏の丸焼きくろさわ西原店の前に立つと、専用ロースターから立ちのぼる香ばしい煙に誰もが食欲を刺激されます。平日の午前中であっても駐車場には次々と車が滑り込み、紙袋を抱えた常連客が満面の笑みで店を後にする光景は、もはや石下地域の日常的な風物詩です。
くろさわのルーツは昭和30年代に遡ります。かつて常総鉄道(現・関東鉄道常総線)が結ぶ水運と陸運の要衝として栄えた石下の中心街(本町)で鶏肉専門店として創業したのが始まりです。当時から「冷めても柔らかく、皮まで旨い」と評判を呼び、地域の冠婚葬祭やお祝い事、運動会の定番ご馳走として親しまれてきました。その伝統の味を受け継ぎつつ、広々とした駐車場とアクセス性を兼ね備えた新店舗として誕生したのが現在の西原店です。
地元民が「大手のフライドチキンチェーンよりも、鶏を食べるならくろさわ」と口を揃える最大の理由は、国産若鶏を丸ごと専用ロースターでじっくり時間をかけて火入れする製法にあります。余分な脂を丁寧に落としながら遠火で焼き上げるため、表面の皮はパリッと香ばしく、中の肉繊維にはジューシーな肉汁がしっかりと閉じ込められています。そこに絡むのが、半世紀以上の試行錯誤が生んだ門外不出の甘辛醤油ダレ。ガツンと鼻腔をくすぐるニンニクと香味野菜のパンチ、芳醇な醤油のコクが絶妙なバランスで調和し、一度かぶりつくと骨の周りまでしゃぶり尽くしたくなる強烈な中毒性を生み出しています。