巨大数の領域が真に常軌を逸し始めるのは、「10の何乗」というべき乗表記の限界を超えた先です。数学者ドナルド・クヌースが提唱したクヌースの矢印表記(タワー表記)は、掛け算の繰り返しである累乗をさらに反復する演算体系を提供しました。
例えば、3↑3は \(3^3 = 27\) ですが、矢印が2本になると指数タワーを意味します。
$$3 \uparrow\uparrow 3 = 3^{3^3} = 3^{27} = 7,625,597,484,987$$
矢印が3本(\(3 \uparrow\uparrow\uparrow 3\))になると、「3が7兆6000億個積み重なった指数タワー」という、この時点で通常の宇宙空間に書き出すことが不可能な数になります。かつて数学の証明問題(ラムゼー理論)で使われた上限値としてギネス記録に認定されたグラハム数は、矢印4本(\(3 \uparrow\uparrow\uparrow\uparrow 3\))を初期値(\(g_1\))とし、その矢印の本数自体を次のステップの矢印の数にする操作を64回繰り返した数(\(G_{64}\))です。
人間の脳がグラハム数の全桁の情報を物理的に保持しようとすると、情報密度が事象の地平面を超え、脳がブラックホールへと崩壊すると計算されるほどです。
さらに驚くべきことに、グラフ理論から生まれたTREE(3)は、そのグラハム数を塵芥(じんかい)へと変滅させます。TREE関数は、色付きの頂点を持つ「木」の成長ゲームにおいて、ある禁則ルール下で何ステップ継続できるかを測るものです。TREE(1)=1、TREE(2)=3と極めて穏やかに始まりますが、TREE(3)になった瞬間、増加スピードは急増加関数階層の極限へと突入し、グラハム数を記述する矢印表記の体系すら粉々に粉砕する巨大さへと跳ね上がります。