スマートグラスやAIアシスタントが日常に溶け込み、あらゆる業務が自動化された2026年。便利さと引き換えに私たちが失ったのは、手触りのある実感だったのかもしれない。週末の阿蘇に集まる旅行者の顔ぶれを見れば、その変化がよくわかる。
「画面の向こう側の高解像度な映像よりも、1匹の動物のぬくもりのほうが圧倒的に心を動かすんです」——東京から一人旅で訪れていた30代のシステムエンジニアは、そう漏らした。観光地を忙しなく巡るスタンプラリー型の旅は影を潜め、ひとつの場所で深い安らぎを得るリトリート需要がかつてない高まりを見せている。南阿蘇の澄んだ風と、動物たちの飾り気のない振る舞いは、過負荷に陥った現代人の神経を静かに整える特効薬として機能している。