なぜ消費者は、実績ある登山メーカーのギアではなくダイソーを選ぶのか。取材を進めると、現代の消費者に根付いた極めてドライな経済合理性が浮かび上がってくる。大手メーカーの製品は頑丈で質感も優れているが、紛失や破損のリスク、そして毎日の汗や泥による汚れがつきまとう。
「通勤電車に置き忘れたり、酷使して金具が緩んだりしても、100円や300円ならその日の帰り道に買い直せばいい」。都内で営業職に従事する40代女性はそう言い切る。過酷な気候下において、道具は「一生モノを大切に手入れして使う」対象から、「ワンシーズンで割り切って使い潰す」消耗品へとシフトした。ダイソーの製品群は、この心理的ハードルを極限まで引き下げたことで、巨大なシェアを握るに至った。