近年の大波となっているのが、カカオ豆の選別から焙煎、コンチング(撹拌)までを一貫して行う「ビーン・トゥ・バー」の手法だ。職人たちはまるでワインの醸造家のように、豆の生産地の気候や土壌がもたらす微細なニュアンスを巧みにコントロールする。
今回取材に応じた老舗のマスターショコラティエは、長年封印されてきた未公開レシピの要を明かしてくれた。「決め手は、わずかコンマ数度の焙煎温度の違いと、カカオニブの砕き具合にある」。カカオ本来のパワフルな風味を損なわず、余韻の贅沢な広がりを生み出す技術。それこそが、機械化された大量生産では決して再現できないハンドクラフトの真骨頂なのだ。