ネット上の掲示板やSNSで頻繁に見受けられるのが、「花粉症の関節痛にはロキソニンを飲んでおけばOK」という短絡的なアドバイスです。しかし、ここには看過できない医学的落とし穴が存在します。
ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)をはじめとする非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジンの生成を抑制し、痛みを一時的に麻痺させる対症療法薬に過ぎません。前述の通り、花粉症による関節痛の根本原因は、マスト細胞の脱顆粒とそれに続くサイトカインの連鎖放出です。ロキソニンはアレルギー反応そのものを止める力を持たないため、薬効が切れた途端に激しい痛みがぶり返します。
それどころか、NSAIDsの連用には重大なリスクが伴います。胃粘膜を荒らすだけでなく、アレルギー体質の患者が安易に服用することで、喘息発作や気道攣縮を誘発するアスピリン喘息(解熱鎮痛薬過敏症)の引き金を引く危険性があります。
また、花粉症と筋肉痛の違いについても正確に認識しておく必要があります。患者が「関節が痛い」と訴える痛みのうち、少なからぬ割合が実は激しいくしゃみ発作に伴う筋肉痛です。くしゃみ1回の衝撃は、時速300km以上の呼気流出とともに腹直筋、背筋、肋間筋へ瞬間的に強烈な負荷をかけます。1日に数十回のくしゃみを繰り返すことで、体幹や背中、首周りの筋膜に微細断裂が生じ、これが「節々の痛み」として錯覚されるケースも多発しています。関節そのものの滑膜炎的アプローチと、物理的負荷による筋膜性疼痛は、明確に区別して対処しなければなりません。