植物としての正式なプロフィールを掘り下げると、驚くべき事実に行き当たります。店頭では当たり前のように「トルコキキョウ」と呼ばれていますが、トルコ原産でもなければ、キキョウ科の植物でもありません。植物分類学上の正確な位置づけは、リンドウ科ユーストマ属(学名:Eustoma russellianum)です。
なぜ実態とかけ離れた名称が定着したのか。そのトルコキキョウ 名前の由来 なぜという問いには、昭和初期の園芸史における興味深いエピソードが残されています。
学名の「ユーストマ(Eustoma)」は、ギリシャ語で「良い」を意味する「eu」と、「口」を意味する「stoma」が合わさった言葉です。直訳すれば「美しい口もと」を指し、ふっくらと開く筒状の花姿に由来しています。ここから派生して、ユーストマ 花言葉には「良い語らい」という温かな意味が与えられました。
原産地は北アメリカ中西部からメキシコ北部にかけての乾燥地帯や湿地帯です。大正時代(1930年代初頭)に日本へ初めて種子が渡来した際、以下の2つの視覚的印象から命名されたというのが有力な通説です。
- 「トルコ」の由来:開花直前の蕾がねじれるように巻いており、その渦巻く形状が中東の「トルコ人のターバン」に酷似していた説。あるいは、原種が持つ濃い青紫色が地中海の「トルコ石」や「トルコブルー」を想起させたという説。
- 「キキョウ」の由来:当時の一重咲きの原種が、日本人に馴染み深い桔梗の花びらや咲き姿に極めて似通っていたため。
原産地の北米では原種は地味な野草に過ぎず、園芸植物としての評価は決して高くありませんでした。しかし、この素朴な青い花に無限の可能性を見出したのが日本の育種家(アグリブリーダー)たちでした。昭和中期から長野県や山形県、高知県などの篤農家や種苗メーカーが交配を重ね、世界で初めて「八重咲き」の開発に成功。さらに花弁の縁が波打つ「フリル咲き」、大輪種、グラデーションカラーの複色(バイカラー)など、圧倒的な美しさを持つ品種を次々と生み出しました。
現在、世界中の生花市場に流通しているトルコキキョウの品種の約7〜8割は日本発祥の遺伝資源に由来しており、まさに「日本の職人技が生み出した奇跡のグローバルフラワー」と呼ぶにふさわしい歴史を誇っています。