水道の民間移管において、最も恐れるべきは料金高騰だけではない。命の安全に直接関わる「水質の悪化」と「大規模災害時の対応遅延」という極めて深刻な問題が潜んでいる。コスト削減を最優先する民間事業者は、人件費抑制のために熟練した技術者をリストラし、水質管理や日常点検の簡略化を図る傾向がある。その結果、海外の事例では異臭や濁水の発生、化学物質の混入といった事故が頻発した。
水問題の第一人者である水ジャーナリストの橋本淳司氏は、日本の地震リスクと水道のコンセッション方式の相性の悪さについて強い警鐘を鳴らし続けている。地震や豪雨などの大規模災害が発生した際、採算性を重視する民間企業が莫大な復旧費用を自社負担して迅速に復旧作業を行う保証はあるのかという点だ。自治体直営であれば利益度外視で即座に全国の自治体間応援要請が機能するが、民間主導の水道事業では契約上の責任範囲や費用負担の不透明さが障害となり、災害復旧が大幅に遅れる危険性が高い。