レバノン本国の経済規模を超えた富を生み出すもう一つのエンジンが、世界中に散らばる「ディアスポラ(離散民)」の経済網だ。本国の人口を遥かに上回る千数百万人のレバノン系住民が、ブラジルや西アフリカ、欧米などで活発なビジネスを展開している。特にシオラレオネやリベリアといった西アフリカ諸国におけるダイヤモンド貿易は、一部のレバノン系商人に天文学的な利益をもたらした。
現地で調達された原石や貴金属の貿易益は、欧州のプライベートバンクを経由して本国ベイルートの高級不動産や金融商品へ還流する。過酷な内戦や政治的リスクを生き抜いてきたビジネスマンたちは、一国だけに依存しない多角的なサプライチェーンと送金ルートを確立。この強固な一族・血縁ネットワークこそが、いかなる経済危機をも跳ね返すレバノン富裕層の真の強みとなっている。