母の呪縛に悩む人々が最も苦しめられるのが、世間に溢れる「親は無条件にありがたい存在である」という根拠なき前提です。ネット掲示板や知恵袋などでは、親への違和感を打ち明けた相談者に対して「産んで育ててもらった恩を忘れるな」「親の愛情を毒親と決めつけるのは甘えだ」といった的外れなバッシングが浴びせられる場面が散見されます。
しかし、これは明確な誤解です。衣食住を提供し学校に通わせることは、親としての法的な最低限の養育義務(民法第820条)であり、子どもの精神的自由を奪い人格を否定してよい免罪符にはなりません。心理カウンセリングの現場でも、毒親の特徴を持つ家庭ほど、親が「誰のおかげで飯が食えていると思っているのか」という恩着せがましいフレーズを多用することが分かっています。
また、「一度徹底的に話し合えば母親も理解してくれるはずだ」という期待も、多くの当事者が陥る危険な罠です。過干渉な親の多くは長年培った自己防衛機制が強固であり、子どもの率直な告白を「反抗」や「自分への攻撃」と受け取って逆上するか、あるいは被害者のように泣き崩れて話をすり替えます。「親を変えるための対話」は二次被害を生むリスクが高く、目指すべきは対話による和解ではなく、自分自身の認知の書き換えと物理的な境界線の確立なのです。