「ドーナツ=トランス脂肪酸の塊で危険」というネガティブな印象が根強く残っている最大の要因は、2000年代初頭から中盤にかけて起きた世界的な油脂規制の波にあります。当時、米食品医薬品局(FDA)をはじめとする各国の保健当局が、部分水素添加油脂(PHO)に含まれる工業由来のトランス脂肪酸が冠動脈性心疾患のリスクを顕著に高めると警告を発しました。アメリカで飲食店のトランス脂肪酸使用禁止令が相次いで報じられたことで、日本国内でも「揚げ菓子やショートニングを使った食品は体に悪い」という強い警戒感が一般消費者の間に急速に広がった歴史があります。
ネット検索で「ミスドは体に悪いのか」という疑問が今なお上位に挙がる背景には、こうした欧米の規制報道の残像に加え、かつて昭和から平成初期のドーナツに見られた「独特の重さ」や「胸やけの経験」が記憶として焼き付いている側面が見逃せません。しかし、そこで語られている情報の多くは、10年以上前の古い知識や、日本と海外の食生活の違いを無視した極端な言説が混ざり合ったものです。現在の店頭に並ぶドーナツの油質は、かつてのものとは構造から根本的に異なっています。