物語の骨格をなすのは、失われた記憶と人間の業を解き明かしていく極上のミステリー・サスペンスだ。地方都市で起きた未解決の失踪事件と、現代の東京で暗躍する巨大組織の思惑。二つの無関係に見える出来事が、解きほぐすほどに複雑に絡み合っていく。観客は一瞬たりともスクリーンから目を離すことができない。
しかし、単なるスリラーにとどまらないのが本作の真骨頂だ。綿密な取材に基づいて執筆された天才脚本家のシナリオは、登場人物一人ひとりの葛藤や情愛を泥臭く描き出す極めて重厚なヒューマンドラマへと結実している。極限状態に追い込まれた人間が見せる醜さと、その裏に潜む息をのむほど美しく切ない救い。ジャンルの垣根を軽々と飛び越える多層的なストーリーテリングこそが、試写を見た映画関係者を唸らせた最大の理由である。