だが、革新的なプロジェクトが平坦な道であるはずもない。クランクイン直前のロケハン現場では、リアリティを巡って映画プロデューサーと主演俳優の間で激しい意見の衝突があったと伝えられている。CGを多用した安全な撮影を提案するプロデューサーに対し、主演俳優は「本物の泥と風がなければ、この男の絶望は表現できない」と、過酷な実地ロケーションを要求したという。
結果として制作陣は、冬の山岳地帯での過酷な長期ロケを敢行することを決断した。極寒のなかで俳優陣が見せた鬼気迫る演技は、モニター越しに見ていたスタッフ全員を沈黙させたという。妥協なき熱量がフィルムの隅々にまで焼き付けられている。