映画版『そして誰もいなくなった』歴代比較と衝撃の結末・犯人の真相

映画版『そして誰もいなくなった』歴代比較と衝撃の結末・犯人の真相

映画版『そして誰もいなくなった』歴代比較と衝撃の結末・犯人の真相の全貌を丁寧に掘り下げてご紹介します。

本作の核心である犯人の正体とトリックの真相は、ミステリー史における最高到達点の一つです。惨劇の黒幕は、元高等法院判事のローレンス・ウォーグレイヴでした。彼の犯行動機は、生来の「正義への執着」と、抑えがたい「人を殺害してみたいというサディスティックな欲望」という、相反する二つの情動が融合した結果生まれたものです。

ウォーグレイヴは不治の病に侵されており、余命いくばくもないことを宣告されていました。そこで彼は自らの死を最高傑作の芸術犯罪に仕立て上げる計画を立案します。標的として選ばれたのは、「現行の法では裁くことのできない冷酷な殺人者たち」でした。過失や間接的な作為によって他人を死に追いやった者たちを孤島に集め、童謡の歌詞に見立てて処刑していく私刑劇を幕開けさせたのです。

本作最大の心理トリックは、被害者の罪の重さに応じた殺害順序と、自らの偽装死にあります。

  • 殺害の優先順位:比較的罪が軽い(悪意の度合いが低い)者から先に毒殺などで苦痛なく殺害し、最も狡猾で利己的な罪を犯した者ほど、恐怖と猜疑心で精神を極限まで苛むために後回しにされた。
  • 医師を利用した偽装死:人望ある判事という立場を利用し、情緒不安定に陥っていたアームストロング医師を言葉巧みに抱き込み、「犯人を罠にかけるため」と騙して自身の偽装射殺を証言させた。これにより、自らを容疑者リストから完全に除外させることに成功した。
  • 心理誘導による自殺:最後の生存者となったヴェラに対し、部屋に首吊り縄と踏み台を用意しておくことで、極限状態の心理を利用して自発的に自殺へと誘導した。

法を司る最高権力者が、法の盲点を突いた罪人たちを自ら裁くという二重の皮肉。この歪んだ正義感の暴走こそが、ウォーグレイヴという怪物を生み出した根源でした。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。