ピカチュウの奇跡的な表現力を支えているのが、世界中から絶賛される声優・大谷育江氏によるキャラクターボイスだ。全世界の放送において、ピカチュウの声だけは吹替を介さず大谷氏のオリジナルの声がそのまま採用されている。これ自体、世界のアニメーション史において極めて異例の快挙と言える。
現場からの証言によると、アフレコ用のアニメ『ポケットモンスター』の台本には、単に「ピカピカ」と書かれているわけではないという。大谷氏の手元にある台本には、本来ピカチュウが伝えたい日本語の文章——例えば「大丈夫だよ、僕が守るから!」「それは違うと思うな」といった具体的なセリフ——がびっしりと書き込まれている。大谷氏はその日本語のニュアンスと感情の高まりを頭の中で咀嚼し、それを「ピカチュウの音節」へと翻訳してマイクに向かう。だからこそ、視聴者は言葉の意味を直接理解できずとも、ピカチュウが何を感じ、何を伝えたいのかをダイレクトに直感できるのだ。