2004年のクリスマスイブ、超高層マンション「スカイローズガーデン」48階の野口邸で、ラウンジ勤務の野口貴弘と妻の奈央子が変死体となって発見されました。現場には、杉下希美、成瀬慎司、安藤望、そして西崎真人の4人が居合わせていました。警察の取り調べに対し、西崎は「自分が野口貴弘を鈍器で殴り殺した」と単独犯行を自供し、懲役10年の判決を受けました。
しかし、捜査資料や関係者の供述を再構築すると、法廷で確定した判決とは全く異なる戦慄の真実が浮かび上がります。野口夫妻事件の真犯人は西崎真人ではなく、妻の野口奈央子でした。
事件当夜に現場で起きていた実際の時系列は以下の通りです。
西崎は、野口貴弘から過酷なドメスティック・バイオレンス(DV)を受けていた奈央子を救出するため、希美と共謀して「N作戦II」を決行しました。西崎が将棋の相手として野口邸に上がり込み、希美が外からサポートする計画でした。しかし、室内に乗り込んだ西崎に対し、異常な独占欲をたぎらせる貴弘が激昂して殴りかかり、西崎の首を絞め上げます。
瀕死の西崎を救おうとした奈央子が咄嗟に手にした真鍮の花瓶(燭台)で夫・貴弘の頭部を強打。貴弘はその場で絶命しました。ところが、奈央子は暴力を振るわれながらも夫を狂信的に愛しており、「貴弘さんなしでは生きていけない」と激しく取り乱し、自ら果物ナイフで胸を突いて命を絶ったのです。
西崎が現場で目にしたのは、変わり果てた夫妻の遺体でした。西崎は自身を救おうとしてくれた奈央子の名誉を守り、彼女を殺人犯・自殺者として世間に晒さないため、「自分が不倫のもつれで貴弘を殺し、逆上した貴弘が奈央子を刺した」という偽りのシナリオを仕立て上げ、自首を選びました。これが、10年間にわたり隠蔽され続けた野口夫妻殺害事件の真相です。