映画界の至宝として数億円の価値がつけられる一方で、日常のトイショップやディズニーストアの棚から、このビキニ姿のフィギュアやTシャツは姿を消しました。ネット上では「ディズニーによる過去の歴史抹消」「フェミニズム圧力に屈した表現規制」といった過激な言説が散見されますが、関係各所の取材記録や関係者の証言を丹念に精査すると、ディズニー規制の真相はより構造的かつ現実的なビジネス判断にあったことが浮き彫りになります。
発端となったのは、ウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカスフィルムを約40億5,000万ドルで買収した後の2015年秋でした。マーベルのコミックアーティストであるJ・スコット・キャンベルがSNS上で「ディズニー社内では今後、いわゆる『スレイブレイア(奴隷レイア)』の立体物やアパレルなどの新規マーチャンダイジングを原則行わない方針が定まりつつある」と漏らしたことで、ファンダムに激震が走ったのです。
このグッズ廃止理由を決定づけた要因は、大きく分けて2点存在します。
第1の決定打は、「ファミリーフレンドリー・ブランドの堅持と児童向け玩具の倫理基準」です。買収後、ディズニーは『スター・ウォーズ』を全世代、とりわけ女児を含む次世代の子供たちへ広く届ける戦略を敷きました。その際、大手量販店の玩具売り場において、成人向け男性の視線を意識した露出度の高い拘束衣装が「女児向けドール」や「アクションフィギュア」と並列して販売されている状況に対し、米国の保護者団体や教育関係者から懸念の声が上がっていた事実は否定できません。
第2の決定打は、「キャラクター・アイデンティティの再定義」です。劇中のレイア・オーガナは、オルデランの王女であり、帝国軍の圧政に立ち向かう銀河反乱同盟軍の最高司令官、のちには将軍(ジェネラル)として崇敬される不屈の女性指導者です。ルーカスフィルムの幹部陣は、新三部作(エピソード7〜9)を展開するにあたり、彼女のパブリックイメージを「囚われのセクシャルシンボル」から「偉大なる戦士・指導者」へと正しく回帰させる方針を固めました。性的消費の対象としての側面を後退させ、キャラクター本来の尊厳を守るというブランドガイドラインの刷新こそが、一連の自粛の真実だったのです。