大阪串カツの歴史は、1929年(昭和4年)、新世界の片隅で「だるま」の初代女将・百野ヨシエ氏が創業した屋台に端を発します。当時、新世界周辺には釜ヶ崎(あいりん地区)をはじめとする日雇い労働者が密集していました。汗水垂らして働く労働者たちに対し、「安価で、腹持ちが良く、素早く食べられる栄養源を提供したい」という切実な思いから開発されたのが串カツです。
当時高価だった牛肉の小片(スジ肉や端肉)を竹串に刺し、小麦粉・卵・水を合わせた分厚い衣をまとわせて油で揚げることで、見かけのボリュームとカロリーを大幅に増幅させました。これが串カツが「安くて美味しい」最大の理由です。原価を抑えつつ、満腹感と美味しさを極大化させるという大阪商人の合理精神が、この1本の串に凝縮されています。
さらに味の決定打となったのが牛脂(ヘッド油)の使用です。植物油に比べて香ばしさと独特のコクを生み出す牛脂は、冷めても風味が損なわれにくい特性を持ちます。カリッとした衣の食感と、ウスターソースをベースに野菜や果実の甘みを調合した特製ブレンドだれ。これらが融合することで、安価な食材が一級の酒の肴へと昇華する仕組みが完成したのです。