アニメ版のクリーンなイメージしか持たない人々が最も衝撃を受けるのが、長谷川町子による原作4コマ漫画の生々しさです。1946年に福岡の『夕刊フクニチ』で連載が始まり、後に『朝日新聞』へ移籍した原作は、戦後の混乱期と高度経済成長期を生きる庶民の逞しさとエゴイズムが剥き出しで描かれています。
原作では、サザエが空き巣に入った泥棒を容赦なく叩きのめしたり、波平が激怒して家族に手を上げたり、サザエとフネが通行人の容姿や服装を辛辣に嘲笑したりする場面が日常茶飯事です。また、自著『サザエさんうちあけ話』などでも語られる通り、作者自身の家庭環境や戦中・戦後のシビアな体験が投影されており、現代でいう「毒親」「過干渉」とも取れる鋭利な人間関係の摩擦が隠されることなく描かれています。
決して「道徳的な理想の家族」として描かれたわけではなく、人間のドロドロとした欲望や世知辛さを笑い飛ばす風刺劇であったことが、現代の読者にとって「ブラックで怖い」と感じられる大きな要因となっています。