脳手術を完了させたエメラルドゴキブリバチは、すぐに獲物を巣穴へ連れて行くわけではありません。毒の作用によってゴキブリが激しいグルーミング(身繕い)行動を約30分間続け、動きが完全に沈静化するのを待ちます。その後、ハチはゴキブリの触角の先端を半分ほど噛み切り、溢れ出る体液(血リンパ)を摂取して自身のエネルギーを補給します。
栄養補給を終えると、ハチは残った触角の根元を口器でくわえ、まるで飼い犬のリードを引くかのようにゴキブリを誘導します。ゴキブリは自らの脚で従順に歩行し、ハチが事前に見繕った狭い隙間や巣穴の中へと入っていきます。
巣穴へ収容した後の産卵および寄生プロセスは、宿主の鮮度を限界まで保つための冷徹な合理性に満ちています。
幼虫はさらに、抗菌・抗真菌物質を含む特異な分泌物を体内へ放出し、宿主の死骸が腐敗菌やカビによって劣化するのを防ぐことまで判明しています。生きたまま保存し、計画的に内臓を消費し尽くすという、隙のない生命維持システムが確立されています。