巨大なエチゼンクラゲの毒性について、「触れただけで即死する猛毒」という極端な噂が流れることもありますが、これは正確ではありません。毒液そのものの致死力(半数致死量など)だけで比較した場合、猛毒として知られるハブクラゲやカツオノエボシよりも毒性そのものはマイルドと分類されています。
しかし、エチゼンクラゲの本当の恐ろしさは「毒の濃度」ではなく、「圧倒的な物理的表面積と刺胞の総数」にあります。エチゼンクラゲの口腕(触手のように見える部分)には、無数の「刺胞(毒針を備えた微小な細胞)」がびっしりと並んでいます。人間が海中で絡みつかれた場合、全身に何千本、何万本もの毒針が一斉に刺さることになり、結果として体内に注入される刺胞毒の総量が膨大になります。
国内外の海洋毒性学・海洋生物研究機関のデータによると、エチゼンクラゲの毒素には細胞膜を破壊する溶血毒や、心筋・血管系に作用するタンパク質性毒素が含まれています。健康な成人であっても、広範囲にわたって刺傷を受けるとショック状態に陥り、溺水や循環不全を引き起こす危険性を十分に孕んでいます。