「一見様」は一般に「いちげんさま」と読みます。元々は「一見(いちげん)」という言葉に敬称の「様」や親しみを込めた「さん」を付けた表現で、過去に一度も取引や来店実績がなく、何の紹介も持たずに初めて訪れた客を指します。対義語としては、何度も通って店との信頼関係を築いた「馴染み客(常連客)」が挙げられます。
日本における「一見様お断り」の歴史は古く、江戸時代の京都・祇園などの花街(かがい)や大坂の豪商が集う高級料亭で発展しました。当時のお茶屋や料亭は、単に飲食を提供する場所ではなく、政治家、豪商、文化人が密談や高度な商談を行う「極めてプライベートな社交場」として機能していました。
そうした空間に素性の分からない新規客が無秩序に入り込むと、店内の治安や客同士の機密保持が脅かされます。そのため、「既存の顧客から素性を保証された人物のみを受け入れる」という厳格なフィルタリングシステムが自然発生的に定着しました。