ネット検索で頻出する「樹海で遺体は本当にあるのか」という疑問に対し、取材に基づく率直な答えを述べるならば、「発見される事例は実在するが、ネットの噂のような劇的な状況は完全に誇張である」というのが現場の一致した見解です。SNSや動画共有サイトでは、あたかも遊歩道を少し歩くだけで白骨死体や首吊りの痕跡に遭遇するかのような扇情的なコンテンツが散見されますが、これは再生回数を稼ぐための作為的な演出やデマに過ぎません。
富岳風穴や鳴沢氷穴を結ぶ整備された東海自然歩道を歩く一般観光客が、偶然遺体を目撃する確率は極めてゼロに近い数値です。山梨県警察関係者の証言によると、実際に青木ヶ原樹海での遺体発見に至るケースの大半は、整備された遊歩道から数十メートルから数百メートル以上も奥深くへ分け入った、樹木が密生する未整備エリアや溶岩の裂け目(クレバス)の底です。そこは一般人が迷い込めば数分で方角を失う危険地帯であり、地元猟友会やキノコ狩りの住民、あるいは捜索隊が足を踏み入れない限り、数か月から数年間にわたって人目に触れないことも珍しくありません。
かつてオカルト本などで語られた「樹海の奥には遺体がそのまま放置されている村がある」といった噂も完全な創作です。後述するように、定期的なパトロールや目撃通報、捜索活動によって発見された事案は、すべて所轄の富士吉田警察署へ引き継がれ、法に基づいた厳格な現場検証と回収が行われています。オカルト的な好奇心で語られるイメージと、現場の法的な処理体制との間には、冷静に直視すべき大きな乖離があります。