SNSやネットのQ&Aコミュニティでは、この曲に関して長年信じ込まれているいくつかの「誤解」が存在します。それらを検証すると、意外な真実が浮かび上がってきます。
最大の誤解は、「イエス・キリストの生誕を称えるために作られた神聖な教会讃美歌である」という思い込みです。先述の通り、原曲であるウェールズの『Nos Galan』は、大晦日の晩にエール(酒)を酌み交わし、炉端で竪琴に合わせて女性たちと踊るための完全に世俗的な民謡でした。18世紀には巨匠モーツァルトがこの美しい旋律に着目し、『ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調(K.301)』の第2楽章にそのモチーフを引用したことでも知られています。それが19世紀に英語圏へ持ち込まれた際、クリスマスの歌詞が付けられたことで、世界的なクリスマスソングへと変貌を遂げたのです。
もう一つの盲点は、「日本で自生しているヒイラギと、歌詞に登場するヒイラギは全く別の植物である」という点です。日本の山野に生える「ヒイラギ(柊)」はモクセイ科に属し、晩秋に白く甘い香りの小さな花を咲かせますが、実は黒紫色の実をつけます。一方、欧米のキャロルに登場する「セイヨウヒイラギ(English Holly)」はモチノキ科で、冬に艶やかな真っ赤な実をつけます。葉のトゲという外見的な類似性から同じ名前で呼ばれていますが、植物学的には完全に別種です。日本の住宅地で赤い実をつけているのは「セイヨウヒイラギ」か、別種の「アメリカヒイラギ」「クロガネモチ」であることがほとんどです。