「たかが穴を1つ開けるだけに店舗へ行くのは面倒」「ダイソーやセリアで100円のポンチを買えば十分ではないか」と考える方もいるでしょう。実際に100均の工具売り場には、革や布に穴を開けるためのポンチが陳列されています。しかし、セルフ加工とプロの技術の間には、道具の精度と仕上がりの美しさにおいて決定的な差が存在します。
100円ショップで販売されている穴あけポンチは、ハンマーで上から強く叩き込んで革を打ち抜くタイプが主流です。これを使用する場合、以下のようなトラブルが頻発します。
第1に、革の断面(コバ)の毛羽立ちと裂けです。安価なポンチは刃先の切れ味が甘く、革の繊維をスパッと断ち切るのではなく、無理やり押し潰してちぎる形になります。その結果、穴の周囲の革がボロボロと毛羽立ち、使用しているうちにそこから亀裂が入ってベルトが裂けてしまう事態を招きます。
第2に、穴のサイズ・形状の不一致です。ベルトの穴は単純な丸型だけでなく、ピンの形状に合わせて楕円形や涙型に成形されているものが少なくありません。100均の工具では一般的な丸穴しか開けられず、既存の穴と直径が1ミリでも異なると、遠目から見ても「後から無理やり開けた不自然な穴」であることが明白になってしまいます。
プロの工房では、革の硬さや厚みに応じて刃先を研磨した専用のロータリーポンチやスクリューポンチを使い分けます。力を均等に加えながら回転させて打ち抜くため、断面は滑らかで美しく、必要に応じて断面のコバを着色・コーティングして補強する技術も持ち合わせています。数百円の工賃を節約しようとして数千円から数万円のベルトを台無しにするリスクを考えれば、プロに依頼する価値は極めて高いと言えます。