スピッツのフロントマンである草野マサムネが紡ぎ出す世界は、常に生と死の匂いや、独特のフェティシズムを含んでいる。原曲『ハチミツ』は、軽快なバンドサウンドと爽快なメロディラインで包み込まれているため、一見すると心地よいポップソングに聞こえる。しかし、歌詞のディテールに目を向けると、そこには非常に濃密な感情の揺らぎが漂っている。
aikoはこの潜在的な切なさを完全に見抜いていた。テンポ感を絶妙にコントロールし、アコースティックな響きを強調した音像の上で、彼女は言葉の余白を丁寧に歌い上げる。原曲が持つ「青春の疾走」を「夜の静寂の中で噛み締める追憶」へと転換してみせた手腕は、まさに圧巻である。