オープンイノベーションを推進するスタートアップ役員や老舗製造業の熟練技術者への取材では、一様に「初期の要領の良さは長期的な成功と相関しない」という声が聞かれます。国内の大手ITベンダーで開発部門を率いる執行役員(48歳)は、かつての特番インタビューの場でこう述懐しています。
「新卒の頃、同期の中で最もプログラミングの習得が遅く、毎晩泣きながらデバッグをしていました。同期はネットのコードをコピペして手際よく動くものを作っていましたが、私はなぜ1行のコードが動くのか、メモリ内部で何が起きているのかを理解しないと先に進めなかった。10年経った時、新しいアーキテクチャへの刷新プロジェクトを率いることができたのは、コピペで済ませてこなかった私だけでした」
SNSや知恵袋などのコミュニティを分析しても、「20代のうちは要領が良い同僚に嫉妬していたが、30代を過ぎて彼らが同じポジションにとどまる中、自分は独自の専門分野で指名されるようになった」という投稿が共感を集めています。コツコツ継続できる人の深層心理には、「自分は人より劣っているから、人一倍やらなければ追いつけない」という健全な危機感(防衛的ペシミズム)が存在します。この心理が、過信による油断を排除し、徹底したチェック体制や品質管理への執着を生む原動力となっているのです。