柳谷観音 楊谷寺を語る上で欠かせないのが、全国の神社仏閣に一大ムーブメントを巻き起こした柳谷観音 楊谷寺の花手水です。参拝前に手や口を清める手水舎に色鮮やかな季節の草花を浮かべるこの取り組みは、日下俊英執事長(現・副住職)が「参拝者に少しでも四季の移ろいを感じ、心を癒やしてほしい」との思いから2015年頃に境内の一角で始めたのが起源とされています。境内に点在する複数の手水鉢には、春の桜、初夏の紫陽花、秋の紅葉、冬の南天など、四季折々の植物が芸術的な美しさで生け込まれ、参拝者の視覚を心地よく刺激します。
しかし、楊谷寺の魅力は視覚的な美しさだけにとどまりません。根本にあるのは、平安時代から連綿と続く柳谷観音の眼病平癒と独鈷水(おこうずい)への篤い信仰です。大同2年(807年)、弘法大師空海が当山で祈祷を行った際、親猿が目の不自由な子猿のために17日間にわたり湧き水で目を洗い続け、奇跡的に目が開いたという伝承が残されています。空海はこの湧き水を霊水「独鈷水」として眼病平癒の祈祷水に指定しました。歴代の天皇をはじめ、眼病に悩む人々が全国から訪れる霊場として知られ、現在も多くの参拝者が霊水を求めて列を作ります。
パソコンやスマートフォンによる深刻な眼精疲労や視力低下に悩む現代人にとって、「目を労わる祈り」と「花手水による視覚的な癒やし」が見事に重なり合っていることこそが、世代を超えて人々を惹きつける最大の要因といえます。