食卓に皿を中心としてセットする際、フォークとスプーンの置き方には明確な国際プロトコルが存在します。基本原則は極めてシンプルで、「皿の左側にフォーク、右側にナイフとスプーン」です。コース料理のように複数のカトラリーが並ぶ場合は、「外側から内側に向かって料理の順序通りに使う」配置が徹底されます。
では、なぜこの並び順なのか。カトラリー並べ方左右の理由を紐解く鍵は、人間の利き手とカトラリー発祥の歴史と経緯にあります。
古代から中世初期のヨーロッパにおいて、食事は基本的に「手づかみ」と「個人携行のナイフ」で行われていました。スプーンは液状のスープを飲む道具として古くから存在し、主に右手に握られていました。一方、フォークが食卓に広く普及したのは16世紀のイタリア・フィレンツェからフランス宮廷へカトリーヌ・ド・メディシスが嫁いだ際にもたらされたのが契機とされています。当初、フォークは「神が与えた食物を手で触れずに食べる気取った道具」「悪魔の角に似ている」と教会から猛反発を受けました。
しかし、ペストをはじめとする感染症の流行を経て衛生意識が高まるにつれ、肉を切り分ける際に左手で肉を押さえる道具として定着していきました。つまり、最も力を込めて扱う「切るナイフ」と「すくうスプーン」を器用な右手に、食材を固定するフォークを左手に持たせるという、極めて身体機能に即した物理的な必然性から左右の配置が固定化されたのです。