ファッション界の頂点を極めつつあった村上淳ですが、彼の表現欲求は紙面の上だけでは収まりませんでした。村上淳の俳優デビュー作となったのは、1992年に放送されたフジテレビの深夜ドラマ『アルファベット2/3』です。さらに翌1993年には、橋本以蔵監督による映画『ぷるぷる 天使的休日』でスクリーンデビューを飾り、本格的に役者としての第一歩を踏み出しました。
しかし、モデル出身の俳優が映画界に本格参入することに対して、当時は現在以上に厳しい偏見と高いハードルが存在していました。華やかなルックスだけで消費されることを嫌った彼は、メジャーなトレンディドラマの王道ルートをあえて避け、インディペンデント映画や作家性の強い監督たちの現場へと自ら身を投じていきます。
廣木隆一監督の『不貞の季節』(2000年)や、中江裕司監督の『ナビィの恋』(1999年)、阪本順治監督の『新・仁義なき戦い。』(2000年)など、妥協のない演出で知られる巨匠たちの作品に次々と出演。現場取材の記録によると、当時の彼は自身の演技をモニターで確認することすら拒み、「役としてその場にどう息づくか」だけをストイックに追求していたといいます。その泥臭いまでの執念が、モデルの肩書を脱ぎ捨てた「本物の映画俳優・村上淳」を鍛え上げました。