公用車を実際に運行するドライバーの労働環境や法的位置づけも、外部からは見えにくい領域である。一般に「公用車の運転手は特別な国家資格が必要なのではないか」と誤解されがちだが、制度上の公用車運転手資格において普通自動車第二種運転免許は必須とされていない。公用車は白ナンバーの自家用車扱いであるため、法的には普通自動車第一種運転免許を所持していれば誰でも運行可能である。
だが、要人を乗せる運転手の現場は極めて過酷であり、求められるスキル水準は通常のタクシードライバーを凌駕する。かつては自治体の正規職員である「庁用自動車運転手(現業公務員)」が定年まで専任で担当するのが通例であった。しかし人件費抑制の号令のもと、近年では大半の自治体が民間ハイヤー会社への運行委託や人材派遣契約へと切り替えている。委託先ドライバーには、緊急急行時の高度な車両制御技術、要人警護マニュアルの熟知、さらには車内で交わされる人事や政策の機密情報を一切口外しない厳格な守秘義務が課される。
また、近年の法令改正によって公用車運行記録管理義務は桁違いに強化された。白ナンバー車両を5台以上(定員11人以上の場合は1台以上)保有する事業所には安全運転管理者の選任が道路交通法で義務付けられており、自治体も例外ではない。アルコール検知器を用いた酒気帯び確認の義務化および記録の1年間保存、デジタルタコグラフやGPSログによる走行日時・発着地・経路・距離の完全電子記録が定着した。これにより、「運転手が待機時間中に独断で公用車を私用走行させる」「記録をごまかして架空の公務走行をでっち上げる」といった旧態依然とした不正は、デジタル監査の網によって極めて発覚しやすい環境へと激変している。