フィルムを剥がそうとするとき、道具を用意するのが面倒で「親指の爪で端を引っ掛けて持ち上げよう」とする人は後を絶ちません。スマートフォンの画面修理を手掛ける専門業者の現場報告によると、フィルム貼り替え時に本体画面を傷つけて持ち込まれるトラブルの約6割が、爪や硬い物で端をこじ開けようとした痕跡を残しているといいます。
爪で剥がすリスクと理由を工学的な視点から紐解くと、主に3つの重大な落とし穴が存在します。第1に、スマートフォンの表面ガラスには指紋付着を防ぐ「撥油コーティング(オレオフォビックコーティング)」が極薄で施されています。爪を立てて局所的に強い摩擦圧力を加えると、フィルムが剥がれる前にこのコーティング層が削れ、光の反射ムラや指ざわりの悪化を引き起こします。
第2に、近年のスマートフォンはベゼル(外枠)が極限まで削ぎ落とされており、ディスプレイガラスと筐体フレームの隙間が0.1ミリ単位で設計されています。爪を無理にねじ込むと、液晶モジュールの端部(エッジ部分)に剪断応力がかかり、有機ELディスプレイ特有の「緑の縦線ノイズ」やブラックアウトを誘発する恐れがあります。
第3に、対象がガラスフィルムであった場合の人体への危険性です。爪で持ち上げようとしてガラスに局所的な曲げ応力が加わると、強化ガラスは限界点を超えた瞬間にパチンと音を立てて粉砕します。爪の間に鋭利なガラス微粒子が食い込む事故がSNSやQ&Aサイトでも多数報告されており、素手での強引なアプローチは百害あって一利なしと断言できます。