「あの朝、我々は救済ではなく明確な殺意を命じられていた」。手記の冒頭、万年筆の強い筆圧で記された一節が目を引く。これまで公判や断片的な証言で語られてきた内容とは一線を画す、圧倒的な具体性。そこには、地下鉄サリン事件の決行直前に交わされた教団幹部たちの冷酷な会話、そして現場指揮官として現場に向かう途中で抱いていた強烈な恐怖感が泥臭い言葉で吐露されていた。
関係者が明かした最新証言によれば、彼は死刑執行が近づくにつれ、自身の記憶を後世に残すことへ異常なまでの執念を見せていたという。捜査の網をかいくぐるために張り巡らされた工作の裏側や、教団最高幹部らの間で行われていた醜い責任の擦り付け合い。ベールに包まれていた事件の暗部が、当事者の直筆文書という形でついに完全な姿を現したのだ。