「フーチークーチー(Hoochie Coochie、時にHootchy-Kootchy)」という言葉のルーツは、1893年に開催されたシカゴ万国博覧会にまで遡ります。当時、博覧会の見世物興行街(ミッドウェイ・プレザンス)で披露された中東風のエキゾチックなベリーダンスが民衆の間で熱狂的なブームを巻き起こしました。胴体を波打たせ、腰を激しくくねらせる官能的なステップは、当時のヴィクトリア朝的道徳観に強い衝撃を与え、このスタイルのダンス全般が「フーチー・クーチー・ダンス」と呼ばれるようになったのが語源の定説です。
その後、20世紀初頭にかけて移動遊園地(カーニバル)やキャバレーの見世物として全米に定着する過程で、言葉のニュアンスは徐々に変化していきました。当初の「扇情的な見世物ダンス」という意味合いから派生し、街のストリートスラングとして「セクシーで奔放な女性」「夜の街で男を惑わす魅力的な人物」、あるいは単に「性的な魅力やエネルギー」そのものを指す隠語として用いられるようになります。
さらに米南部の黒人文化圏においては、西アフリカ伝来の民間呪術・民間信仰体系である「フードゥー(Hoodoo)」と結びつき、単なる肉体的な魅力を超えて「異性を惹きつける不思議な魔力や強運」を帯びたニュアンスを持つに至りました。下品な罵倒語ではなく、どこか畏怖とユーモア、そして強烈な生命力を称賛する言葉として、独自の文化的ステータスを確立していったのです。