指導現場や整骨院で頻繁に使われる「骨盤を立てる」という言葉ですが、解剖学的に正確に言語化できる人は多くありません。治療歴10年以上の柔道整復師や理学療法士への取材によると、骨盤を立てる本質とは「骨盤が前にも後ろにも傾かず、左右の坐骨(ざこつ)に垂直に体重が乗り、呼吸が最も深く楽に通る位置」を見つける作業を意味します。
骨盤は、左右の寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)と中央の仙骨が強固に結合した、いわば「身体の土台」です。この土台が垂直に整った状態を骨盤ニュートラルポジションと呼びます。この位置が決まると、その上に連なる24個の背骨(脊柱)が自然なS字カーブを描き、重たい頭部(成人で約5〜6kg)の重力を骨格全体で効率よく分散できるようになります。
多くの人が「姿勢を正そう」と意識した瞬間に、背中やお腹の筋肉をギューッと力ませて固めてしまいます。しかし、本物の骨盤を立てる感覚とは、筋力で無理やり固定する力技ではありません。椅子とお尻が接するピンポイントの骨(坐骨結節)を探し当て、そこに上半身の重みをふわりと預ける「脱力と安定の両立」こそが真実です。