検索エンジンやオカルト系掲示板において、江古田の森公園が時折取り沙汰される最大の要因は、前述した「結核療養所跡地」という過去の属性にあります。「夜間に白い影が見える」「かつて隔離病棟があった場所で寒気が走る」といった怪談めいた言説が散見されますが、現場の綿密なフィールドワークと近隣住民への取材を行えば、そうした話がいかに現実から乖離しているかが浮き彫りになります。
心理学・社会学の観点から分析すると、これは「歴史的背景の記号化」と「暗渠・夜間の木立による認知的歪み」が結びついた典型的な都市伝説の構造です。大正から昭和期にかけての結核という過酷な病に対する人々の恐れやタブー視が、インターネットの普及とともにステレオタイプな怪談として増幅・消費されたに過ぎません。
実際に夕暮れ時から夜間にかけて園内を歩くと、園路には等間隔で街灯が設置されており、夜21時を過ぎてもウォーキングやジョギングに勤しむ地域住民の姿が絶えません。隣接する福祉施設やUR都市機構の住宅群からの明かりも届き、死角になりやすい樹林地トレイルを除けば、都内の一般的な大規模公園と何ら変わらない安全性が保たれています。「不気味な心霊スポット」というイメージは、現地を知らない者がネット上の断片的な情報から作り上げた虚構であると断言できます。