背中の中心や肩甲骨の内縁に生じる痛みは、痛みの性質や発生のプロセスを客観的に観察することで、筋骨格系のトラブルなのか内科的疾患なのかをおおむねスクリーニングできます。厚生労働省の国民生活基礎調査でも、背部痛や肩こりは自覚症状の上位に位置していますが、筋肉由来の痛みと内臓由来の「関連痛」には明確な違いが存在します。
最も重要な識別軸は「姿勢や身体の動きによって痛みが変化するかどうか」です。背中を丸めたり、腕を動かしたり、患部を指で押した際に痛みが強くなる・あるいは気持ちよさを感じる場合は、背部を支える筋肉(菱形筋や僧帽筋、脊柱起立筋)のトリガーポイントに起因する筋筋膜性疼痛の蓋然性が高いと判断されます。
対照的に、どのような姿勢をとっても痛みが和らがない、深呼吸をすると激しく痛む、あるいは夜間の安静時や食後に痛みが急増するといった兆候がある場合、内臓からの神経伝達が脊髄レベルで混線して背中に痛みを錯覚させる「関連痛(放散痛)」を強く疑う必要があります。
痛みの現れ方によって警戒すべき内臓疾患は以下の通り分類されます。
- 左側の肩甲骨付近の痛み・圧迫感:狭心症、心筋梗塞、急性大動脈解離、胃潰瘍など
- 右側の肩甲骨付近の痛み・差し込む痛み:胆石症、胆嚢炎、肝炎、十二指腸潰瘍など
- 背中の中央から全体へ突き抜けるような激痛:急性膵炎、大動脈解離、胸椎圧迫骨折など