『ヘタリア』におけるリヒテンシュタインとスイスの関係性が単なるフィクションの萌え要素にとどまらず、多くの読者の胸を打つのは、そこに20世紀初頭の実在の歴史(史実)が見事に投影されているからに他なりません。
第一次世界大戦の終結に伴い、隣国オーストリア=ハンガリー帝国が崩壊したことで、小国リヒテンシュタイン公国は経済的・財政的に壊滅的な打撃を受け、国家存亡の危機に瀕しました。作中でも、リヒテンシュタインが過去に財政難で路頭に迷い、道端で行き倒れかけていたところを、永世中立国であるスイスが発見して保護するという形でドラマチックに描かれています。
史実においてリヒテンシュタインは、1923年の関税同盟締結によってスイスとの国境管理を共通化し、自国通貨としてスイス・フランを採用、さらには軍隊を持たない代わりに外交や防衛の代行をスイスに委託しました。この「歴史上もっとも緊密な隣国同士の信頼関係」が、作中では「義兄妹」という至高の絆として見事に描き出されています。