1991年11月13日、朝日出版社から発売された『Santa Fe』は、瞬く間に全国の書店から姿を消しました。定価4,500円という当時の書籍市場としては極めて高額な大型ハードカバーであったにもかかわらず、予約だけで数十万部が殺到。最終的な写真集 Santa Fe 発行部数は公称150万部を突破し、日本の出版史において現在に至るまで誰にも破られていない不滅の金字塔を打ち立てました。
この写真集がこれほどまでの社会現象となった要因のひとつに、芸術性とエロティシズムの絶妙な境界線に位置づけられた数々のカットがあります。なかでも後世まで語り草となっているのが、通称「サンタフェ ドアノブ」と呼ばれる構図です。木製の扉の前で、無防備な素肌の局部をアンティーク調の丸いドアノブが絶妙な陰影とともに隠すこの一枚は、下品さを微塵も感じさせない彫刻的な美しさを宿していました。
街の書店にはサラリーマンから学生、さらには多くの女性読者が長蛇の列を作りました。それまでヌードグラビアといえば男性が隠れて見るものという世間の偏見がありましたが、『Santa Fe』はアート作品として女性層にも広く受け入れられ、リビングのテーブルに堂々と置かれるカルチャーアイコンへと昇華したのです。