四代目として澤瀉屋の看板を背負い、伝統ある歌舞伎の世界に新たな風を吹き込んだ男。彼が打ち立てた金字塔の一つが『スーパー歌舞伎II ワンピース』である。漫画原作という大胆な試みと宙乗りをはじめとするダイナミックな演出は、若年層や海外の観客をも魅了し、松竹株式会社にとっても歴史的な大ヒット作となった。
テレビドラマでのブレイクも加わり、彼の肩にかかる期待は天文学的な規模に膨らんでいった。しかし、一門を率いる「座頭」としての全責任を一人で抱え込む構造は、彼の精神を徐々に磨り減らしていた。伝統を守りつつ革新を起こし続けるという使命感と、組織内部での人間関係の軋轢。その板挟みとなった葛藤を理解できたのは、ごく限られた側近だけだった。