2024年7月20日午後7時00分、荒川河川敷のスピーカーから流れた「本日の花火大会は中止となりました」というアナウンスは、会場に詰めかけた観客を凍りつかせました。打ち上げ予定時刻は午後7時20分。すでにカウントダウン体制に入っていた現場本部で、一体何が起きていたのでしょうか。
主催である一般財団法人足立区観光交流協会および足立区の現場本部は、気象庁の雨量・雷レーダーを常時監視していました。午後6時半を過ぎた頃、埼玉県南部から東京都城北エリアに向けて急激に発達した線状の積乱雲が南下を開始。午後6時50分を過ぎると遠雷が確認され、上空の気流と発雷確率が「危険レベル」へと跳ね上がりました。
「直前中止理由」の根底にあったのは、河川敷という遮蔽物のないオープンスペース特有の脆弱性です。広大な土手に密集する数十万人の観客、金属製のカメラ三脚、打ち上げ台周辺に設置された点火用配線や火薬類。これらが落雷に晒された場合、直撃雷だけでなく地面を伝う側撃雷によって多数の重傷者・死者が発生する壊滅的な事故につながる恐れがありました。気象データが「100%の安全を担保できない」と告げた瞬間、運営トップは苦渋の決断を下したのです。