マルファン症候群において、外見的な骨格特徴以上に生命へ直結するのが心血管系への影響です。全身の血管壁を構成する結合組織が弱くなることで、心臓から全身へ血液を送り出す大動脈の根元(大動脈基部)が徐々に風船のように膨らむ「大動脈瘤」が発生しやすくなります。
最も警戒すべき事態は、血管の内膜が裂ける「大動脈解離」や、血管が破裂する大動脈破裂です。これらは激痛とともに突然発症し、命を奪う最大の要因となります。また、心臓の弁がうまく閉じなくなる大動脈弁閉鎖不全症や僧帽弁逸脱症を合併することも少なくありません。心血管系のほかにも、水晶体が本来の位置からずれる「水晶体亜脱臼」による視力低下や、肺の組織が破れて穴が開く「自然気胸」などが代表的な症状です。
現在、医療現場では国際的な診断基準である「改訂ヘント基準(Ghent nosology)」が用いられています。大動脈基部の拡大(画像診断)と水晶体脱臼の有無を軸に、FBN1遺伝子変異の同定、家族歴、全身スコアリング(骨格症状のポイント換算)を総合的に組み合わせて精密に診断が下されます。